生前から家族で話し合い~
相続税の税務調査は申告書を提出してから2年目くらいに実施される確率が高いと言われています。平成27年に相続税法が改正され、基礎控除引き下げによる増税がありましたから、これからの税務調査では相続税法改正後の申告案件が調査対象先の中心となっているものとみられます。
相続税改正の影響により、相続税申告の対象者が増えたことで、国税庁の発表では申告件数は年間10万件を超えました。このうち税務調査の対象となる件数が年間およそ1万2千件ですので、相続税申告した人の約8人に1人が税務調査を受けるという計算になります。
税務調査で特に申告漏れの指摘を受けやすいのが名義預金・名義保険などの名義財産です。名義預金についていえば、預貯金口座の名義が配偶者や子どもであったとしても、亡くなられた方(被相続人)が資金を用意した上で、被相続人自ら通帳や印鑑の管理を行い、名義人が把握していないところで入出金をしているというような場合、こうした預貯金口座は名義預金として、相続税の課税対象とみなされます。配偶者や子どもの収入に対してあまりに多額の預金残高があれば、一部の口座は被相続人の「名義預金」ではないか、という指摘を受けることになるでしょう。
一方で、こうした名義財産の存在は、残された家族はあまり把握していないものですから、税務調査のときに初めて「名義預金」の存在を指摘されても、調査官を納得させられるような説明をすることは難しいでしょう。生前から税理士などの力を借りて、名義財産を含めた財産の全体像をしっかり把握し、家族で話し合っておくことをお薦めします。
平成29年12月10日医療タイムス掲載